おいしい干物とは

魚介類を乾燥させたものを干物と言います。
乾燥させて水分を減らすことで細菌の繁殖を抑え保存性を高めるために太古の昔から行われてきた加工方法で、日本だけでなく魚の収穫が行われる世界各地で行われています。
ただし、皆さんが日常口にしている干物と昔の干物は同じものではありません。
冷蔵庫などの冷蔵設備や車などの輸送設備が無い時代までの干物のほとんどは、長い日数をかけて干しカチカチになるまで乾燥させた煮干しや鰹節のような固い干物で、今あるような干物はあったとしても、漁港の近くでしか食べることは出来なかったのです。
そして今の時代、干物は保存食品ではなく、おいしさを味わい、栄養を摂る高価値食品になっています。

干物はなぜおいしいのか

漁港から店頭に冷蔵状態で迅速に運び込まれ、家の冷蔵庫で保存できて取れたての鮮魚を味わえるにもかかわらず、干物の人気が高いのはなぜでしょう。
その理由は鮮魚とはまた違ったおいしさが干物にあるからなのです。
一般的に魚は死後硬直に入るとイノシン酸やグルタミン酸などの旨味成分が生成され、その後魚の組織の軟化に伴って旨味成分が分解されておいしさが減少していきます。
干物の場合、旨味成分が生成された段階で乾燥させますので軟化が起こらず旨味成分がそのまま保持されます。
もう一つのおいしさの理由は、食感です。
刺身やたたきにした時のシコシコした食感、焼き魚のホクホクした食感、それぞれにおいしさを高めてくれますが、干物の食感の特徴はその弾力感にあります。
干物をつくる時に塩を加えたり、味醂干しのように醤油に漬けたりしますが、塩分を加えることで魚の組織が強く結びつき弾力感のある食感をつくり出します。
また、組織の強い結びつきにより旨味成分を閉じ込めるという効果もあります。

干物の栄養成分

元々魚の良質タンパク質については大きな価値が認められていますが、近年になって大きな話題となっている栄養成分にDHA(ドコサヘキサエン酸)があります。
魚の脂肪に含まれている、特に青魚に多い成分で、老若男女を問わず脳の活性化に効果があると言われています。
日本人の知能水準が世界的に高いのも海に囲まれた島国で昔から魚をよく食べていたからかもしれません。